保育士の給料が上がりにくいのは、上限が先に決まっているから|公定価格と処遇改善加算
この記事でわかること
- 給与の原資は園ではなく、国が決める公定価格の側で先に決まっている
- 処遇改善等加算には区分があり、区分3は役職と結びついている
- 国が公定価格を上げても、それが自分の給与明細に出るとは限らない
- だから確認すべきは求人票の額ではなく、加算がどう配分されているか
「保育士の給料が安い」という話は、ほぼ必ず平均額の比較で説明されます。ただ、それだと「なぜ上がりにくいのか」が分かりません。原因は園ごとの経営努力の手前、制度の構造の側にあります。
原資は、園が決める前に決まっている
認可保育所などに国と自治体から支払われる額は、公定価格という仕組みで決まります。施設の種別・定員・地域区分・職員の配置などから算定される、いわば「その園にいくら払うか」の計算式です。
ここが一般の企業と違うところです。売上を伸ばして人件費を増やす、という経路が構造的に細い。 利用者から受け取る保育料も、多くが自治体の基準で決まっています。だから給与の話をするときは、園の姿勢より先に公定価格の側を見ることになります。
処遇改善等加算は、公定価格に上乗せする仕組み
その公定価格に、賃金改善を目的として上乗せされるのが処遇改善等加算です。区分が分かれていて、それぞれ性質が違います。
| 区分 | 何に対する加算か |
|---|---|
| 区分1 | 職員の平均経験年数などに応じた、全体への賃金改善 |
| 区分2 | 技能・経験を積んだ職員に対する追加的な処遇改善 |
| 区分3 | 役職に応じた処遇改善。副主任保育士・専門リーダー・職務分野別リーダーなどが対象 |
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国が上げても、明細に出るとは限らない
ここが本題です。経営実態調査のあと、公定価格上の人件費は令和6年度に+10.7%、令和7年度に+5.3%(いずれも人事院勧告に準拠)改定されています。ニュースで「保育士の処遇改善」と報じられるのはこの部分です。
比べるなら、施設種別をそろえる
「保育士の平均給与」として出回る数字は、どの調査の、いつ時点の、どの施設種別かでかなり変わります。こども家庭庁の経営実態調査は施設種別ごとに集計されていて、公立と私立でも別に出ています。
自分の給与を比べるときは、同じ施設種別・同じ公私の区分の数字と比べること。ここをそろえないと、高い低いの判断が意味を持ちません。
自分の園で確認できること
- 加算の対象になっているか。 区分3は役職と結びついているので、辞令や職務分担で確認できます。
- 加算が何に乗っているか。 基本給か、手当か、賞与か。基本給に乗ると賞与や退職金の計算基礎も上がります。
- 賃金改善計画の内容。 加算を受ける園は賃金改善の計画と実績を自治体に届け出ます。職員向けに周知している園もあります。
この3つは、転職を考える前にいまの園で確認できることです。求人票の月給だけを並べて比べるより、判断の材料としては効きます。
よくある質問
- Q. 保育士の平均給与はいくらですか。
- 施設種別・公私の区分・調査の時点で変わるため、一つの数字では答えられません。当サイトではこども家庭庁の経営実態調査の集計値を、施設種別ごとに調査時点を明示して掲載しています。
- Q. 処遇改善等加算をもらっているかどうかは、どこで分かりますか。
- 給与明細の手当名で分かることもありますが、基本給や賞与に含めて配分している園もあります。区分3は役職と結びついているため、まず自分が対象の役職に就いているかを確認するのが早い方法です。
- Q. 公定価格が上がれば給料も上がりますか。
- 公定価格の改定は園に支払われる額の改定です。それを職員の賃金にどう配分するかには園ごとの裁量があるため、同じ率で個人の給与が上がるとは限りません。
- Q. 公立と私立ではどちらが高いですか。
- 経営実態調査では公立と私立が別に集計されており、施設種別によって傾向が異なります。当サイトの計算機では同じ区分どうしで比較できるようにしています。
- Q. この計算機は将来の給与を予測しますか。
- しません。経験年数に応じた給与カーブのような出典のない推計値は作らない設計です。出せるのは、公的調査で実測されている平均との差と、加算の要件を満たしているかどうかです。
この記事の出典
制度は改正されます。手続きをする前に、必ず上記の一次資料または 所管の窓口で最新の内容をご確認ください。