看護師の職場は10種類あるが、3人に2人は病院にいる|産業看護師が0.4%な理由は法律にある
この記事でわかること
- 就業看護師1,363,142人のうち、病院が895,944人(65.7%)
- 事業所(産業看護)は5,879人で0.4%。病院の152分の1しかいない
- 労働安全衛生法に「看護師」という語は1度も出てこない
- 行政と産業保健は、看護師よりも保健師の職場になっている
「病院以外で働きたい」と考えたとき、選択肢はいくつも挙がります。訪問看護、介護施設、企業の健康管理室、保健所、学校。ただし、それぞれの入口の広さは同じではありません。
厚生労働省の「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(令和7年7月29日公表)は、就業看護師がどの就業場所に何人いるかを数えています。数字を並べると、入口の広さの違いがそのまま出ます。
1. 就業場所別の人数
| 就業場所 | 実人員 | 割合 |
|---|---|---|
| 病院 | 895,944人 | 65.7% |
| 診療所 | 194,665人 | 14.3% |
| 介護保険施設等 | 107,984人 | 7.9% |
| 訪問看護ステーション | 91,022人 | 6.7% |
| 社会福祉施設 | 28,093人 | 2.1% |
| 看護師等学校養成所又は研究機関 | 16,790人 | 1.2% |
| その他 | 11,750人 | 0.9% |
| 市区町村・保健所・都道府県 | 10,795人 | 0.8% |
| 事業所(産業看護) | 5,879人 | 0.4% |
| 助産所 | 220人 | 0.0% |
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病院と診療所で80.0%です。ここから外に出る道は、数の上では細くなります。とくに事業所は5,879人で、病院の152分の1。就業看護師1,000人のうち4人という規模です。
2. 産業看護師の求人が出ない理由は、法律の条文にある
企業の健康管理室で働く「産業看護師」は人気のある働き方として語られますが、実数は0.4%です。理由は、法律が企業に看護職を置くことを命じていないことにあります。
つまり、企業が看護職を置くのは法律に命じられているからではなく、その企業がそうしたいと考えたときだけです。だから求人は景気や会社の方針で増減し、欠員が出ない限り募集自体が出ません。「求人が少ない」のは偶然ではなく、この構造の結果です。
3. 同じ場所で、保健師とは人数が逆転している
同じ表で保健師を並べると、看護師にとって細い入口が、保健師にとっては主要な職場になっていることが分かります。
| 就業場所 | 看護師 | 看護師の割合 | 保健師 | 保健師の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 病院 | 895,944人 | 65.7% | 3,987人 | 6.3% |
| 診療所 | 194,665人 | 14.3% | 2,990人 | 4.7% |
| 訪問看護ステーション | 91,022人 | 6.7% | 451人 | 0.7% |
| 市区町村 | 8,035人 | 0.6% | 33,217人 | 52.3% |
| 保健所 | 1,555人 | 0.1% | 9,623人 | 15.1% |
| 事業所 | 5,879人 | 0.4% | 5,045人 | 7.9% |
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4. 常勤換算と実人員の差が語ること
同じ表は、実人員(頭数)とは別に常勤換算の数字も出しています。この2つの差は、その職場の雇われ方を映します。
- 就業看護師の総数 実人員 1,363,142人 / 常勤換算 1,244,944.4人
- 介護保険施設等 実人員 107,984人 / 常勤換算 88,827.6人(82.3%)。病院より非常勤の割合が高い区分です
- 事業所 実人員 5,879人 / 常勤換算 4,979.0人(84.7%)。1つの事業所に1人か2人という配置が一般的です
- 市区町村・保健所・都道府県 実人員 10,795人 / 常勤換算 7,002.6人(64.9%)。10の職場でこの割合がいちばん低く、会計年度任用など任期のある働き方の比率が高いことを示しています
5. 統計が「無い」区分もある
ここまでの数字は全部「就業場所」の話です。病棟・オペ室・ICU・外来は就業場所ではなく、病院の中の配属先なので、この表には出てきません。
配属先ごとに全国で何人いるかを数えた公的な統計は存在しません。 そのため、病棟やICUを上の10職場と同じ表に並べて順位を付けると、人数の裏付けがあるものと無いものが同じ顔で並ぶことになります。当サイトの診断でも、配属先は別のページに分けています。
まとめ
- 就業看護師1,363,142人のうち、病院が65.7%、診療所と合わせて80.0%です
- 事業所(産業看護)は5,879人で0.4%。 病院の152分の1です
- 労働安全衛生法に「看護師」は1度も出てこない。 企業に置く義務が無いので求人が出ません
- 行政と産業保健は、看護師より保健師の職場です。市区町村だけで保健師全体の52.3%
- 常勤換算と実人員の差は、その職場の雇われ方を映します
よくある質問
- Q. 産業看護師になるには保健師の資格が必要ですか。
- 法律上、企業に看護職を置く義務そのものがないため、資格要件を法律が定めているわけではありません。ただし労働安全衛生法66条の7(保健指導)と66条の10(ストレスチェックの実施者)に「保健師」の名が挙がっているため、求人で保健師資格を条件にしているものが多くなっています。看護師のみで応募できる求人もあるので、募集要項で確認してください。
- Q. 訪問看護には臨床経験3年以上が必要と聞きました。法律の要件ですか。
- 法令の要件ではありません。指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準(平成12年厚生省令第80号)が定めているのは、看護職員が常勤換算で2.5以上いること、うち1人は常勤であること、管理者が保健師・助産師又は看護師であることなどです。経験年数の定めはなく、3年という数字は事業所の採用基準として広く使われているものです。
- Q. 病院以外で人数がいちばん多いのはどこですか。
- 診療所の194,665人(14.3%)です。その次が介護保険施設等の107,984人(7.9%)、訪問看護ステーションの91,022人(6.7%)と続きます。介護保険施設等が訪問看護ステーションより多い点は見落とされやすいところです。
- Q. 看護師の数は増えていますか。
- 増えています。同じ調査の年次推移では、平成26(2014)年の1,086,779人から令和6(2024)年の1,363,142人まで増加しており、令和4年からは51,455人(3.9%)の増加です。ただし増えた人がどの職場に入ったかは、就業場所別の内訳を見る必要があります。
- Q. 病棟とICUでは、どちらが人数が多いのですか。
- 公的な統計がありません。厚生労働省が数えているのは就業場所(病院・診療所・訪問看護ステーションなど)までで、病院の中の配属先ごとに全国で何人いるかを数えた統計は存在しません。そのため当サイトでも、配属先には人数を持たせず、就業場所とは別のページに分けています。
この記事の出典
- 厚生労働省 令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況
- e-Gov法令検索 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)
- e-Gov法令検索 指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準(平成12年厚生省令第80号)
- e-Gov法令検索 医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)
制度は改正されます。手続きをする前に、必ず上記の一次資料または所管の窓口で最新の内容をご確認ください。