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ネットに体験談を書く前に|消される線と、法律の問題になる線を分けて見る

この記事でわかること

  • 名誉毀損は、書いた内容が本当のことでも成立しうる
  • 事実を書かずに悪口だけを書く形は、別の条文(侮辱)の問題になる
  • 削除の申出があると、書いた人に照会が来ることがある。7日という期間がある
  • 名前・所属・日付をはずすだけで、法律の話になる余地はかなり減る

ひどい目にあったことを、どこかに書いて残したいときがあります。同じことをしそうな人に届けば役に立ちます。ただ、書き方によっては法律の話になります。

この記事は「書くな」という話ではありません。どこに線があるかを先に見ておけば、線の内側で書けます。 内側の書き方まで含めて整理します。

1. 本当のことでも、名誉毀損になりうる

いちばん誤解されているのがここです。刑法230条は、公然と事実を摘示して人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず罰する、と書いています。

  • 公然と — 多くの人が見られる状態のこと。ネットの投稿はここに入りやすいです
  • 事実を摘示 — 具体的な出来事を書くこと。「◯◯という店で△△をされた」の形です
  • 事実の有無にかかわらず — 本当かどうかは、成立するかどうかとは別に扱われるという意味です

罰は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金と定められています。「嘘は書いていないから大丈夫」という理解は、条文の書き方と合っていません。

2. 具体的なことを書かず、悪口だけ書く形は別の条文になる

「事実を書かなければいい」と考えて、悪口だけを書く形にすると、刑法231条の侮辱の問題になります。事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した場合が対象です。罰は1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料です。

書き方どの条文の問題になりうるか
起きた出来事を、相手が分かる形で書く刑法230条(名誉毀損)。本当のことでも成立しうる
出来事は書かず、人の評価だけを書く刑法231条(侮辱)
相手が誰か分からない形で、起きたことだけ書く上のどちらも、名誉を毀損される「人」が特定できないと問題にしづらくなる

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刑事の話とは別に、民事で損害賠償を請求されることもあります(民法709条)。刑事にならなくても民事だけが進むことがあるため、2つは分けて考えます。

3. 消されるときは、7日という期間が出てくる

書き込みを消してほしいという申出があると、サイトの運営会社が判断します。このとき運営会社が使える手順が法律に書かれています。長い名前ですが、情報流通プラットフォーム対処法と呼ばれています(以前はプロバイダ責任制限法という名前でした)。

  1. 書かれたと言う人が、運営会社に削除の申出をする
  2. 運営会社が、書いた人に「消してよいか」を照会することがある
  3. 照会を受けた日から7日たっても、書いた人から「消すことに同意しない」という申出がないとき、運営会社は消しても書いた人への賠償責任を負わない

つまり、黙っていると7日で消える形になっているということです。消されたくない理由があるなら、期間の中で答える必要があります。逆に、消してほしい側から見れば、この7日が待ち時間になります。

4. 匿名でも、名前が出る手続きがある

同じ法律に、発信者情報の開示請求(5条)と、裁判所が出す発信者情報開示命令(8条)があります。権利が侵害されたことが明らかで、開示を受ける正当な理由があるときに使われる手続きです。

「名前を出していないから誰が書いたか分からない」は、手続きの前では前提になりません。 書くときは、名前が出た場合にも説明できる内容かどうかで決めるほうが安全です。

線の内側で書く4つのやり方

  1. 相手が分かる情報を落とす。 会社名・店名・部署・地名・日付の組み合わせで、人は特定できます。1つ残すだけでも足がかりになります
  2. 評価ではなく、起きたことだけを書く。 「ひどい上司だった」は評価です。「残業の記録を消された」は出来事です。出来事のほうが、後から確かめられます
  3. 確かめられないことは書かない。 聞いた話、たぶんそうだと思ったことは外します。証明の話になったときに困るのは書いた側です
  4. 日付と数字は、公開せずに自分の手元に残す。 相談や手続きで必要になるのはこちらです。公開する文章に入れる必要はありません

きょう、やること

  1. 書きかけの文から、会社名・店名・日付を消す。 消しても伝わるかを読み返します
  2. 「ひどい」「最悪」を、起きたことに書き換える。 1文でいいので出来事の形にします
  3. 手元のメモに、日付と金額と言われたことを残す。 公開する文には入れません

よくある質問

Q. 本当のことを書いても名誉毀損になりますか。
刑法230条は「その事実の有無にかかわらず」と定めているため、本当のことでも問題になりえます。ただし230条の2に例外があり、公共の利害に関する事実で、目的が専ら公益を図ることにあり、真実であることの証明があった場合は罰しないとされています。個別の判断は弁護士にご確認ください。
Q. 会社名を書かなければ大丈夫ですか。
誰のことを書いているか特定できるかどうかが問題になります。会社名を書かなくても、部署・地名・日付・人数などの組み合わせで特定できることがあります。特定できる要素を減らすほど、法律の話になる余地は小さくなります。
Q. 書き込みが消されました。理由は分かりますか。
大規模特定電気通信役務提供者として指定された事業者は、削除の基準をあらかじめ公表することが法律で定められています。公表されている基準を見ると、どの類型で消えたのかを確かめられます。申出を受けて消した場合は、申出者に対して結果と理由を通知する仕組みもあります。
Q. 匿名で書けば身元は分かりませんか。
情報流通プラットフォーム対処法には発信者情報の開示請求と、裁判所による発信者情報開示命令の手続きがあります。権利侵害が明らかで開示を受ける正当な理由があるときに使われるため、匿名であることは前提になりません。
Q. 誹謗中傷を受けたとき、どこに相談できますか。
総務省の違法・有害情報相談センターが、削除の申出の方法などについて無料で相談を受け付けています。損害賠償や刑事の手続きを考える場合は弁護士への相談になり、費用が心配なときは法テラスの無料相談の制度があります。相談の前に、画面全体とURLを保存しておいてください。

この記事の出典

制度は改正されます。手続きをする前に、必ず上記の一次資料または所管の窓口で最新の内容をご確認ください。

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