初期費用「家賃の4〜6か月分」では削る場所が決まらない|支払先で3つに割る
出典 国土交通省 ほか2件
この記事でわかること
- 初期費用は支払先で3つに分かれ、動かし方がそれぞれ違う
- 法律で上限が決まっているのは仲介手数料だけ
- 敷金・礼金は法定の上限が無く、項目ではなく物件で決まる
- 引越し・家具家電は相手を自分で選べるので、ここだけ相見積もりが効く
部屋を借りるときの初期費用は、たいてい「家賃の4〜6か月分」という1つの数字で説明されます。総額の見当をつけるにはこれで足りますが、「じゃあどこを削るのか」を決めるには使えません。
理由は単純で、その中身が支払先の違う3種類だからです。誰に払うお金なのかで、動かし方が根本的に変わります。混ざったままの1つの数字を見ている限り、どこに手をつけられるのかは見えません。
支払先で割ると、動かし方が決まる
| 誰に払うか | 主な項目 | 何で金額が決まるか |
|---|---|---|
| 仲介業者 | 仲介手数料 | 国土交通大臣の告示で上限が決まっている |
| 貸主(大家) | 敷金・礼金・前家賃・日割り家賃・鍵交換代・消毒代など | 法定の上限は無い。貸主が出した条件に合意したかで決まる |
| 自分で選んだ相手 | 引越し・家具・家電・インターネット回線 | 相見積もりと時期で動く |
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1つめ:法律で上限があるのは、仲介手数料だけ
初期費用のうち、受け取れる額の上限が法令で決まっているのはこの項目だけです。宅地建物取引業法46条1項を受けた国土交通大臣の告示(昭和45年建設省告示第1552号)が定めています。
- 貸主と借主の双方から受け取る合計は、借賃の1か月分の1.1倍以内(=家賃1か月分+消費税)
- 住むための建物の賃貸借では、依頼を受けるにあたって依頼者の承諾を得ている場合を除き、一方から受け取れるのは借賃の1か月分の0.55倍以内
告示の第十一は、第二から第十までによらない報酬の受領を禁じています。依頼者の依頼によって行う広告の料金を除き、仲介手数料とは別の名目で仲介業者が金銭を受け取ることは、この告示が想定していません。 見積書に仲介業者へ払う項目が2つ以上あるなら、そこは聞いていい場所です。
2つめ:貸主に払う分は、項目ではなく物件で決まる
敷金・礼金・鍵交換代・消毒代などは、法定の上限がありません。 貸主が契約条件として提示し、借主が合意したかどうかで決まります。国土交通省の事例集が一時金について繰り返し答えているのも、契約条件として提示され、それに合意したなら支払う必要がある、という形です。
そして、条件の違う物件は現に存在します。 国土交通省の令和6年度住宅市場動向調査(三大都市圏の民間賃貸住宅入居世帯)では、礼金があった世帯は42.6%でした。半分以上は礼金を払っていないということです。敷金・保証金があった世帯は57.7%です。
| 項目 | あった世帯の割合 | 最も多かった月数 |
|---|---|---|
| 敷金・保証金 | 57.7% | 1か月ちょうど(61.7%) |
| 礼金 | 42.6% | 1か月ちょうど(65.0%) |
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3つめ:自分で相手を選べるのは、実はここだけ
引越し・家具・家電・インターネット回線は、支払う相手を自分で決められます。 3つの枠のうち、相見積もりを取ることに意味があるのはこの枠だけです。
裏を返すと、「敷金を安くする方法」を探しても出口はありません。 敷金は預けるお金(民法622条の2第1項)で、退去時に借主の債務を差し引いた残りが返ってきます。安くする対象というより、返ってくる条件を契約書で確かめる対象です。
見る順番
- 仲介業者に払う分:告示の上限を超えていないか、0.55か月分を超える部分は承諾を前提にしているか。別名目の項目が無いか
- 貸主に払う分:契約書の条文で敷金の返還と敷引を確かめる。金額が動かないなら、条件の違う物件と総額で比べる
- 自分で選ぶ分:見積もりを取る。ここだけは金額そのものが動く
この順に見ると、1つめは「根拠を確かめる」、2つめは「物件ごと比べる」、3つめは「見積もりを取る」と、やることが全部違うことがわかります。1つの数字のままだと、この3つが混ざって「なんとなく高い」で終わります。
よくある質問
- Q. 初期費用は結局、家賃の何か月分を見ておけばいいですか。
- 総額の目安としてはよく4〜6か月分と言われますが、この記事の趣旨はその数字を精密にすることではありません。礼金があった世帯は42.6%、敷金・保証金があった世帯は57.7%(国土交通省 令和6年度住宅市場動向調査・三大都市圏)で、有無そのものが物件によって違います。目安の月数より、選ぶ物件の条件のほうが総額を大きく動かします。
- Q. 仲介手数料が家賃の1.1か月分でした。払わないといけませんか。
- 告示は、住むための建物の賃貸借について、依頼者の承諾を得ている場合を除き一方から受け取れるのは借賃の1か月分の0.55倍以内としています。承諾があれば1.1か月分でも告示の範囲内です。確かめられるのは「双方の合計が1.1倍を超えていないか」と「0.55か月分を超える部分が自分の承諾を前提にしているか」の2点です。
- Q. 礼金は交渉で下げられますか。
- 礼金には法定の上限が無く、貸主が契約条件として提示するものです。京都地裁の平成20年9月30日判決は、礼金を賃料の一部前払としての性質を有するものと解したうえで、消費者契約法10条に反して無効とはいえないとしています。契約後に争って取り戻すことは想定しないほうがよい部類の話で、効くのは合意する前、条件の違う物件と総額で比べる形です。
- Q. 鍵交換代や室内消毒代の相場はいくらですか。
- この2つについて全国の相場を公表している官公庁はありません。当サイトも相場としての金額は出さず、見積書の実額を入れてもらう形にしています。出どころの無い数字を相場として書くと、確かめようがないものを根拠にすることになるためです。
この記事の出典
- 国土交通省 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和45年建設省告示第1552号、令和6年国土交通省告示第949号による最終改正)
- 国土交通省 民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(再改訂版)
- 国土交通省 令和6年度住宅市場動向調査報告書 民間賃貸住宅に関する結果
制度は改正されます。手続きをする前に、必ず上記の一次資料または所管の窓口で最新の内容をご確認ください。