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看護師の「お礼奉公」は貸主が誰かで結末が変わる|労基法16条が効くのは4つのうち1つだけ

この記事でわかること

  • 「奨学金」と呼ばれているものが、貸主によって4種類に分かれる
  • 労働基準法16条が問題になるのは、就職先の病院・法人が貸主のときだけ
  • 自治体が貸主なら16条の話ではなく、免除の要件は条例で決まっている
  • 裁判所は5つの要素を総合して判断していて、金額の線を引いていない

看護学校の学費を出してもらう代わりに、卒業後に何年か勤める。この約束は「お礼奉公」「病院奨学金」「修学資金」など、いろいろな名前で呼ばれています。

同じ名前で呼ばれていても、途中で辞めたときの結末はまったく違います。 分かれ目は、お金を貸してくれたのが誰かです。

1. 貸主で4つに分かれる

貸主労基法16条途中で辞めたとき
就職先の病院・医療法人射程に入る貸主が「使用者」にあたるため、返還の定めが16条に反しないかが問題になります
都道府県・市町村射程外自治体は使用者ではないので16条の問題になりません。免除と返還の要件は条例・規則で決まっています
日本学生支援機構(JASSO)射程外お礼奉公とは無関係の制度です。どこで働くかにかかわらず返還条件は変わりません
看護学校・養成所射程外学校は使用者ではないので16条の射程外です。契約書の定めによります

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労働基準法16条は、使用者と労働者の間の契約を規律する条文です。貸主が使用者でなければ、そもそも16条の問題になりません。

2. 労働基準法16条が禁じているもの

労働基準法16条(賠償予定の禁止)は、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約をすることを禁じています。

ここで問題になるのは、返還の約束が「辞めたことに対するペナルティ」なのか「借りたお金を返すだけ」なのか、という点です。後者なら16条には触れません。

3. 裁判所が見ている点

研修や修学の費用の返還義務の定めが16条に反するかは、次の要素を総合して判断されるとされています。1つでも当てはまれば無効、という作りにはなっていません。

  1. 労働契約と区別した金銭消費貸借契約があるか。 借用書を労働契約とは別に交わしているか
  2. 研修・修学に参加することの任意性・自発性。 断る選択肢が実際にあったか
  3. 研修・修学の業務性の程度。 本人のための学びか、病院の人材養成の一環か
  4. 返還免除基準の合理性。 免除に必要な勤務期間の長さ
  5. 返還額・返還方式の合理性。 勤めた期間に応じて減る仕組みがあるか

実際の事件では、貸付の中身が学費ではなく生活費で「賃金の補充として位置付けられるものであった」と述べられた例があります(医療法人K会事件・広島高判平成29年9月6日)。学費の立替えではなく賃金の補充と見られると、返す約束は「働かなければ賃金を返せ」という形に近づきます。

4. 自治体が貸主なら、答えは条例にある

都道府県・市町村の看護師等修学資金は、条例と規則で貸与額・免除の要件・返還の方法が定められています。 病院との契約とは別の系統なので、次のことが変わります。

  • 免除の要件は「指定された施設で一定期間従事すること」であることが多く、特定の1病院に限られないことがあります
  • 転職しても、条件を満たす施設であれば免除が続く場合があります。まず対象施設の範囲を確認します
  • 返還の猶予が定められていることがあります(進学・出産・育児・傷病など)
  • 問い合わせ先は病院ではなく自治体です。条例は自治体のサイトの例規集で読めます

誰が何を決める立場にいるか

決めること決める人・調べる先
貸したお金の額・免除の年限・利息契約書(金銭消費貸借契約書・貸与規程)
自治体の修学資金の免除要件条例・規則(自治体の例規集)
その契約が16条に反するかどうか裁判所
個別の事案への法律の当てはめ弁護士(弁護士法72条)

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当サイトの計算は、契約書の数字から金額を出し、裁判例が見ている点のうちいくつが当てはまるかを数えるところまでです。有効・無効の結論は返しません。

まとめ

  1. 同じ「お礼奉公」でも、貸主で4種類に分かれる。 まず契約書の貸主欄を見ます
  2. 労基法16条が問題になるのは、就職先の病院・法人が貸主のときだけです
  3. 自治体が貸主なら答えは条例にあり、病院の説明と食い違うことがあります
  4. 裁判所は5つの要素を総合して判断していて、金額のしきい値を置いていません
  5. 期間の側には手がかりがあります。 判決は労基法14条の3年を基準として重視すべきだと述べています

よくある質問

Q. お礼奉公の途中で辞めたら、必ず全額返さないといけませんか。
契約書にそう書かれていても、その定めが常にそのまま通るとは限りません。貸主が就職先の病院・法人である場合、返還の定めが労働基準法16条に反しないかが問題になり、裁判で一部の支払いにとどまった例もあります。ただし個別の契約が有効か無効かの判断は法律事務にあたるため、当サイトでは結論を出していません。弁護士や法テラスにご相談ください。
Q. 貸主が県の場合も、労働基準法16条で争えますか。
労働基準法16条は使用者と労働者の間の契約を規律する条文です。都道府県・市町村は貸主であっても使用者ではないため、16条の問題にはなりません。免除の要件と返還の方法は、その自治体の条例・規則で定められています。
Q. 免除に必要な年数が5年でした。長すぎませんか。
広島高裁は、労働基準法14条が労働契約の期間を原則3年(特定の一部の職種については5年)に制限していることを根拠に、事実上の制限となる期間が3年を超えるかどうかを基準として重視すべきだと述べています。ただしこれは総合考慮の一要素であり、年数だけで結論が決まるものではありません。
Q. 毎月の給料から天引きすると言われました。
労働基準法17条は、働くことを条件に前貸しした金銭と賃金を相殺することを禁じています。また24条1項は賃金を全額支払うことを求めています。天引きには労使協定などの根拠が必要です。実際にどう扱われるかは個別の判断になるため、労働基準監督署などの窓口で確認してください。
Q. JASSOの奨学金も、辞めたら一括で返すことになりますか。
日本学生支援機構の貸与奨学金は、お礼奉公とは無関係の制度です。どこで働くか、退職したかどうかによって返還の条件は変わりません。返還が難しい場合は、減額返還や返還期限猶予の制度が別に用意されています。

この記事の出典

制度は改正されます。手続きをする前に、必ず上記の一次資料または所管の窓口で最新の内容をご確認ください。

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