年収が上がる転職で、手取りや時給が下がることがあるのはなぜか|4つの原因
この記事でわかること
- 額面が上がっても手取りの伸びは同じ幅にならない
- 求人票の年収に固定残業代が含まれていると、実質の時給は下がりうる
- 比べる単位を「年収」から「手取り ÷ 拘束時間」に変えると逆転が見える
- 辞める月には、賞与・有休・住民税で一度きりの目減りが起きる
「年収は50万円上がったのに、なぜか前より苦しい」。転職後にこれが起きる理由は精神論ではなく、数え方の単位を変えていないからです。原因は大きく4つあります。
1. 額面が上がっても、手取りは同じ幅では増えない
額面から引かれるのは、所得税・住民税・健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料です。所得税は累進なので、上がったぶんには上がる前より高い税率が掛かります。社会保険料は標準報酬月額という等級表で決まり、等級がひとつ上がると保険料も段で上がります。
つまり、額面の増加分に対する手取りの増加分は必ず小さくなります。これは損をしているのではなく仕組みどおりなのですが、増加分だけを見て生活設計をすると足りなくなります。
2. 求人票の年収に、固定残業代が入っていることがある
「年収450万円(固定残業代45時間分を含む)」という書き方をされていると、残業を45時間しても収入は増えません。いまの職場で残業が月10時間なら、同じ450万円でも1時間あたりの単価はまったく違います。
- 求人票で「固定残業代」「みなし残業」「◯時間分を含む」という表記を探す
- 含まれる時間数と、それを超えた場合に別途支給されるかどうかを確認する
- 月給から固定残業代を引いた額が、本当の基本給になる
基本給が下がると、賞与や退職金の計算基礎も下がります。賞与を「基本給の◯か月分」で決めている会社では、ここが効いてきます。
3. 比べる単位が「年収」のままになっている
ここが本題です。年収は1年でいくらもらうかしか表していません。同じ額でも、それを1,800時間で稼ぐのか2,400時間で稼ぐのかで意味が違います。
比べる単位を変えます。分子を手取り、分母を拘束時間にします。拘束時間には残業だけでなく通勤時間も入れます。通勤が片道30分から片道70分になれば、年間でおよそ300時間ぶんの生活時間が消えるからです。
| 比べ方 | 見えるもの | 見えないもの |
|---|---|---|
| 額面年収 | 会社が払う総額 | 税・社会保険料、働く時間 |
| 手取り年収 | 実際に使える額 | 働く時間 |
| 手取り ÷ 拘束時間 | 1時間を売った値段 | 仕事の中身、将来の伸び |
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4. 辞める月に、一度きりのお金が消える
年収の比較にはまったく現れないのに、実際の口座残高を最も大きく動かすのがここです。3つあります。
- 賞与の支給日在籍要件 — 多くの会社は支給日に在籍していることを支給の条件にしています。算定期間をまるまる働いていても、支給日の前に退職していると出ません。数十万円が退職日1日で変わります。
- 未消化の有給休暇 — 買い取りは原則として義務ではありません。残ったまま退職すると、その分は消えます。
- 住民税の一括徴収 — 1月から5月に退職すると、残りの住民税が最後の給与から一括で差し引かれるのが原則です。最後の手取りが大きく減ります。
まとめ — 求人票を見る前に、いまの数字を確定させる
4つとも、原因は求人票の側ではなく比べ方の側にあります。いまの職場の手取りと拘束時間を先に確定させておけば、求人が出てきたときの判断は算数になります。
よくある質問
- Q. 年収が上がったのに手取りが減ることは本当にありますか。
- 額面が上がって手取りの総額が減ることは通常起きませんが、増加分がごくわずかになることはあります。また転職の年は住民税の徴収方法が変わるため、月ごとの手取りが一時的に下がって見えることがあります。
- Q. 固定残業代はどこで見分けられますか。
- 求人票の給与欄に「固定残業代」「みなし残業」「◯時間分を含む」と書かれています。含まれる時間数と、超過分が別途支給されるかどうかを確認してください。
- Q. 通勤時間まで計算に入れるのは大げさではないですか。
- 片道が40分延びると、月20日で年間約320時間になります。年収の比較ではまったく見えない量なので、時間あたりで比べるなら入れる価値があります。入れるかどうかは計算ツールで切り替えられます。
- Q. 退職日をずらすだけで得をすることはありますか。
- 賞与の支給日在籍要件と住民税の一括徴収は、どちらも日付で結果が変わります。就業規則の支給要件を確認したうえで、退職日の候補を複数で比べてみてください。
- Q. 計算ツールに入れた年収や勤務先の情報は送信されますか。
- 送信していません。入力は端末の中だけで処理され、無料・登録不要で使えます。
この記事の出典
制度は改正されます。手続きをする前に、必ず上記の一次資料または 所管の窓口で最新の内容をご確認ください。