💼 しごと

有給は会社が拒めるのか|「事業の正常な運営を妨げる」の中身と、退職時に効かない理由

この記事でわかること

  • 会社が持っているのは拒否権ではなく、別の時季に変更する権利
  • 変更できるのは「事業の正常な運営を妨げる」場合に限られる
  • 退職時は「別の時季」が存在しないため、変更権が働きにくい
  • 買い上げの予約で日数を減らすことは認められていない

「有給を申請したら断られた」という話は、そもそも制度の形が違います。 労働基準法39条が会社に与えているのは、休ませない権利ではなく、別の日に変える権利です。

この違いは言葉遊びではありません。「今日はだめ」と言えるかどうかではなく、「代わりにいつなら与えられるか」を会社が示せるかどうかが焦点になります。

1. 時季変更権 — 使えるのは「事業の正常な運営を妨げる」場合

年次有給休暇は原則として、労働者が請求する時季に与えられます。 厚生労働省は、使用者が時季を変更できるのは、労働者から指定された時季に休暇を与えることが「事業の正常な運営を妨げる」場合だと説明しています。

厚労省が例として挙げているもの内容
繁忙期の指定年末等、特に業務が繁忙な時季を指定した場合
指定の競合同一時期に多数の労働者の年次有給休暇の指定が競合した場合

← 表は横にスクロールできます →

「事業の正常な運営を妨げる」かどうかが基準であり、休む理由の良し悪しが基準ではありません。

2. 退職時に変更権が働きにくい理由

退職前にまとめて有給を使う場合、時季変更権は構造的に使いにくくなります。 理由は単純で、「他の時季」が存在しないからです。

変更権は、指定された日ではなく別の日に与えるための権利です。退職日より後に与えられる日がなければ、変更する先がありません。 繁忙期であっても、代わりに与える日を作れないからです。

3. 買い上げ — 予約で日数を減らすことはできない

「有給が余ったら買い取ってもらえますか」という質問はよく出ます。ここは順番が大事です。

  • 労働基準法は「有給休暇を与えなければならない」と定めているため、金銭を支給しても与えたことにはなりません
  • 買上げの予約をして、請求できる日数を減らしたり、請求された日数を与えないことはできません
  • 法を上回る日数(会社が独自に上乗せしている分)については、この限りではないとされています

つまり「買い取るから休むな」は認められていません。 一方で、退職時に結果として残った日数の扱いなど、会社が独自に定めている部分は就業規則によります。

4. 年5日は、会社側の義務

2019年4月1日以降、10日以上の年次有給休暇が付与されるすべての労働者について、基準日から1年以内に5日以上を取得させる義務が使用者に課されています。

これは労働者の権利ではなく使用者の義務です。「忙しいから取らせない」は、この5日については使用者側の違反になります。取らせていない会社のほうが問題を抱えるという向きになっている点が、他の部分と違います。

話すときに使う順番

  1. 残日数を確認する。 給与明細・勤怠システム・就業規則のどれかに出ています
  2. 希望日を先に出す。 制度は「労働者が時季を指定する」形から始まります
  3. 変更を求められたら、代わりの日を聞く。 変更権は別の日に与えるための権利です
  4. 退職を伴う場合は、退職日と最終出社日を分けて考える。 有給消化の期間は在籍したままです
  5. 折り合わないときは労働基準監督署の相談窓口へ。 会社を通さずに相談できます

まとめ

  1. 会社にあるのは拒否権ではなく時季変更権。 別の日に与えるための権利です
  2. 使えるのは「事業の正常な運営を妨げる」場合。 繁忙期や指定の競合が例として挙げられています
  3. 退職時は「他の時季」が無いため、変更権が働きにくい
  4. 買上げの予約で日数を減らすことはできない。 法を上回る分は別です
  5. 年5日は使用者の義務。 取らせていないほうが問題になります

よくある質問

Q. 会社は有給を拒否できますか。
拒否権ではなく時季変更権が定められています。労働者から指定された時季に休暇を与えることが「事業の正常な運営を妨げる」場合に、他の時季に与えることができる、という形です。代わりの日を示さずに与えないことは、条文が想定している形ではありません。
Q. 退職前にまとめて有給を使えますか。
時季変更権は「他の時季に与える」ための権利であるため、退職日より後に与えられる日がない場合、変更する先がありません。ただし残っている日数そのものは、労基法115条により2年の消滅時効にかかると解されています。
Q. 有給を取る理由を聞かれたら答える必要がありますか。
時季変更権を行使できるかどうかは「事業の正常な運営を妨げる」かどうかで判断されるもので、休む理由の内容によって決まる仕組みにはなっていません。個別のやり取りで争いになる場合は、労働基準監督署の相談窓口をご利用ください。
Q. 有給を買い取ってもらうことはできますか。
買上げの予約をして請求できる日数を減らしたり、請求された日数を与えないことはできないとされています。ただし、法を上回る日数(会社が独自に上乗せしている分)についてはこの限りではないとされています。
Q. アルバイトでも有給はもらえますか。
もらえます。業種・業態にかかわらず、また正社員・パートタイム労働者などの区分なく、一定の要件を満たすすべての労働者に付与されます。所定労働日数が少ない場合は、日数に応じた比例付与になります。

この記事の出典

制度は改正されます。手続きをする前に、必ず上記の一次資料または 所管の窓口で最新の内容をご確認ください。

あわせて読む

同じ運営者の無料ツール